脾臓腫瘍(Spleen tumor)
腹部の超音波検査で脾臓の腫瘍が診断される場合があります。
1.中高齢犬で偶発的にみつかる場合
2.急激な活動性の低下で受診される場合
脾臓腫瘍の中で最も挙動に注意が必要な疾患は「血管肉腫です」
「腹部超音波検査で脾臓に腫瘍が認められた症例」
(後に脾臓摘出で脾臓の血管肉腫と診断された)
血管肉腫は脾臓などに発生する悪性腫瘍であり、一般的に長期予後は悪いと報告されています。
既存の報告で、外科療法単独で、平均生存期間(MST)が19日から86日と報告されています。
また化学療法との併用では、141日から179日、最長273日などと報告されています。
長期予後の悪い血管肉腫を治療する際にどのような治療選択を行うかは獣医師や飼い主の判断により分かれます。
2013年にアルバレス(francisco J Alvarez)らの報告では、stage3の血管肉腫とstage1,2の血管肉腫に対し、化学療法を実施すれば平均生存期間(MST)に優位差はないと報告しています。例えステージ3でも治療をあきらめるべきではないと報告しています。
「脾臓間質肉腫」
1994年の脾臓原発の間葉系腫瘍の87例の報告(血管肉腫を除く)をまとめた報告では、HPFあたりの核分裂指数により生存期間が異なると報告されております。
免疫染色(CD31(血管内皮マーカー)を実施することで血管肉腫を否定することで、予後に期待がもてるかもしれません。脾臓摘出により予後が期待できる症例も存在するかもしれません。
「当院で外科切除された脾臓間質肉腫」
外観は他の脾臓腫瘍と何ら変わりません)
[References]
VAC Protocol for Treatment of Dogs with Stage III Hemangiosarcoma Francisco J. Alvarez, DVM, J Am Anim Hosp Assoc 2013
Prognosis for Dogs with Stage I or II Splenic Hemangiosarcoma Treated by Splenectomy Alone: 32 Cases (1991-1993) Carrie A. Wood, DVM,J Am Anim Hosp Assoc 1998;34:417-21
2021/11/01