ふく動物病院

診療科目

耳科診療

PSPPシステムは慢性外耳炎、中耳炎の治療概念
「primary, secondary, pre- disposing, and perpetuating の枠組み」

The development and progression of recurrent and/or chronic otitis are multifactorial.
The primary-predisposing-perpetuating (PPP) system is a well-established framework to identify
the primary, predisposing, and perpetuating factors in each case.
More recently, this has been modified to a PSPP/PPPS system to include secondary(s)infections
一次性・素因・持続性・二次感染
耳の内視鏡

犬の重度な細菌性外耳炎において、PSPP理論(Primary, Secondary, Predisposing, Perpetuating)に基づくと、中耳炎を伴う場合の鼓膜切開は治療の成否を分ける非常に有効な手段となります。

鼓膜切開の有効性(PSPP理論の観点)
PSPP理論において、中耳炎はしばしば増悪因子(Perpetuating factors)として分類されます。増悪因子は、一度発生すると主因(アレルギー等)が取り除かれても炎症を永続させ、治療を困難にする要因です。

直接的な排膿と洗浄: 中耳に膿や細菌が溜まっている場合、外耳道からの投薬だけでは不十分です。鼓膜切開により中耳内の貯留物を排出し、直接洗浄(鼓室洗浄)を可能にすることで、感染の温床を根本から叩けます。
正確な診断(感受性試験): 外耳道と中耳では原因菌や薬剤感受性が異なることが多いため、切開して中耳のサンプルを採取することで、より適切な抗生剤を選択できます。

鼓膜切開が検討されるべき症例
鼓膜の肉眼的異常: 鼓膜が不透明、膨隆、または変色している場合。
画像診断での異常: CTやレントゲンで鼓室胞内の不透過性亢進(液体貯留)が認められる場合。
神経症状: 顔面神経麻痺やホルネル症候群など、中耳炎の波及を示唆する症状がある場合。

鼓膜切開の禁忌(または慎重を要する)症例
基本的には全身麻酔下で安全に行われますが、以下の状況では禁忌、あるいは回避される傾向にあります。
耳道の重度な狭窄・石灰化: 外耳道が極端に狭くなっていたり、軟骨が石灰化して器具が物理的に鼓膜まで到達できない場合。この場合は、全耳道切除術(TECA)などの外科的手術が優先されます。
重篤な全身疾患: 鼓膜切開は全身麻酔が必要なため、心臓疾患や肝不全など麻酔リスクが極めて高い症例では慎重な判断が求められます。
内耳炎への波及リスク(手技的要因): 切開部位を誤ると聴小骨や内耳を損傷する恐れがあるため、解剖学的構造が著しく破壊されている症例では高度な技術が必要です。
活動性の高い急性出血: 耳道内が激しく出血しており、視界が確保できない状態でのブラインドな切開は推奨されません。

鼓膜切開は、単なる処置ではなく、「中耳という閉鎖空間の感染管理」を可能にする重要な治療ステップです。