猫の腎不全治療について
皮下点滴に関しては猫の腎不全では体重減少が顕著な症例が多い為、週1〜週2、3回(通院可能の範囲で)を目安に皮下点滴を推奨しております。
猫と人の慢性腎不全では、臨床症状や病理学的所見が大きく異なると言われており、猫の慢性腎不全では臨床症状として多飲多尿、脱水症状がみられ蛋白尿があまり認められません。主な病理学的所見として、尿細管間質性病変が認められております。
一方、人の慢性腎不全の場合には尿量の減少、浮腫、蛋白尿が認められ、病理学的所見として免疫介在性、糖尿病、高血圧などを起因とする糸球体病変が認められます。
我々はこれらの違いにより「猫の慢性腎不全では皮下点滴などの輸液療法が有効である」と考えております。
「猫の皮下点滴」
自宅で皮下点滴をされる飼い主様の参考動画(シリンジ編)
自宅で皮下点滴を行う場合に悩ましいのが輸液剤の種類になります。当院で使用する代表的な輸液は乳酸リンゲルか生理食塩水になります。
一般血液検査でK(カリウム)の上昇がなければ通常では細胞外液に近い組成の乳酸リンゲルが使用されます。生理食塩水はKの濃度が高い症例に使用されます。
また腎不全の症例の多くが高血圧を併発していることも多い為、血圧測定も欠かすことはできません。
「セミントラ」は液体の内服薬であり、投薬が困難な猫(90%程の猫が許容するとか)にも食餌に混ぜて投薬が可能となります。
「セミントラ(ARB製剤)」
代替薬として人薬の「テルミサルタン」を処方しております。液状タイプではありませんが薬価が動物薬より安い利点もありますので、錠剤が服用できる場合には「セミントラ」より変更することを推奨しております。
ラプロスについて
猫の慢性腎不全では尿細管周囲線維化に酸素欠乏の関与が示唆されております。ラプロスは腎臓の循環血液量を増加させ酸素欠乏状態を改善し腎機能を維持することが期待され、猫の慢性腎不全において臨床症状の改善と生活の質の向上につながる薬剤と考えられております。
Geddes, R.F., Elliot, J., Syme, H.M. (2015): Relalionship betweene plasma fibroblast growth factor-23 concentration and survival time in cats with chronic kidney disease. J. Vet. Intern. Med., 29, 1494-1501.
Takenaka,M(2009) Effect of beraprost sodium (BPS) in a new rat partial unilateral ureteral obstruction model
2024/09/01