雌フェレットの発情回帰(副腎腺腫)
副腎皮質由来の増殖性病変(過形成、腺腫、癌)は、若齢で去勢や避妊を行ったフェレットにおいて非常に多く認められる病変の一つです。
フェレットの副腎腫瘍は約8割が左側副腎に発生し、過形成と腺腫が最も一般的で、癌はやや少数と言われています。
腫瘍細胞のホルモン生産により、脱毛、筋力低下、肥満、多飲多尿、メスにおける陰部腫大、乳腺過形成、オスにおける前立腺嚢胞の形成およびそれに付随した排尿困難、貧血、または出血兆候が起こることが知られています。
「フェレットのメスにおける陰部腫大」
本症例は1歳5ヶ月にもかかわらず、副腎疾患の臨床症状が認められました。
発症年齢から卵巣遺残が鑑別に挙げられ、試験的開腹を実施しました。
「発情回帰が認められ、試験的開腹を実施した1歳5ヶ月の避妊済みのフェレットの摘出後の副腎」
病理組織検査にて副腎腺腫と診断されました。
一般的に、内分泌腫瘍は細胞異型性がそれほど強く現れず、組織学的な良性/悪性の判定が難しいことがあります。
腫瘍細胞の被膜への浸潤、血管内浸潤、頻繁な細胞分裂像や広範囲な壊死といった所見が悪性を支持する最もらしい所見になります。本症例の腫瘍はこれらの所見を有しておらず副腎皮質腺腫と判断されました。
一般的に、この病変の切除後の予後は良好と考えられております。
本症例では1歳5ヶ月という比較的若い症例において副腎疾患による症状が認められ、治療が行われました。
2024年6月25日