ふく動物病院

診療科目

⑤変性性脊髄症 Degenerative Myelopathy(DM)

変性性脊髄症(Degenerative Myelopathy:DM)は、痛みを伴わず、ゆっくりと進行する脊髄の病気です。欧米ではジャーマン・シェパードなどの大型犬に多い病気として認知されていますが、大型犬の飼育頭数が少ない本国では、ペンブローク・ウェルシュ・コーギーでの発生頻度が高い疾患です。大型犬やペンブローグ・ウェルシュ・コーギーの他にも、ミニチュア・トイプードルやパグ、ヨークシャー・テリアでの報告もあります。

<症状>
DMの診断において、臨床症状は非常に重要な情報です。
「10歳前後に発症する」
「痛みを伴わない」
「慢性進行性」
「不全麻痺が後肢から始まり前肢へ広がる」
「最終的に呼吸筋が麻痺する」

初期症状は、後ろ足をすって歩くようになることです。症状が進行してくると、前足にも同様の症状が現れます。進行すると、呼吸筋の麻痺により呼吸がしづらくなってきます。
通常、これらの症状は3年くらいかけて進行します。進行の速さには個体差があり、遅い場合には4年以上の経過を辿ることもあります。

<原因>
過去には様々な説が提唱されていましたが、未だに原因は解明されていません。
2008年にミズーリ大学の研究グループによって、DMの原因と考えられる遺伝子変異が見つかりました。この遺伝子は、人の家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす原因遺伝子であることが知られています。

<診断>
確定診断は死亡後剖検による脊髄の病理組織学的検査です。生前診断は未だに確立されていませんが、臨床的症状や各種検査を組み合わせることによりDMの診断を下すことができます。
診断において重要なことは、疫学や臨床症状、各種検査による他疾患の除外です。
椎間板ヘルニアの好発犬種でもあるコーギーは、発症初期に他疾患との鑑別が非常に困難です。椎間板ヘルニアや腫瘍性疾患、炎症性疾患、脊髄くも膜嚢胞、骨関節疾患、馬尾症候群などとの鑑別が必要であり、これらを除外するために神経学的検査や画像診断(X-ray、CT、MRI)、脳脊髄液検査を実施します。
「遺伝子変異をペアで持っている」+「臨床症状がDMと合致する」場合は、DMに罹っている可能性が高いと考えられます。しかし、高齢動物は他疾患とDMを併発している可能性があるため、診断や治療は慎重に進めていかなければなりません。

<治療>
残念ながら、現在のところDMの根本的な治療はありません。治療の目的は、筋肉の衰えを予防し、病態の進行を遅らせることです。
治療は、薬剤療法やサプリメント、理学療法、日常生活のケアからなります。
病態の進行に伴って、減量やリハビリテーション、靴下やスリング、車いすの着用が推奨されます。

DMは、ゆっくりですが確実に進行していく病気です。発症した動物とそのご家族が、この病気をよく知り、適切なケアができるようご提案させていただきます。一緒に生活してきた動物とご家族が、幸せな時間を過ごせるよう最大限お手伝い致します。