ふく動物病院

診療科目

腹膜心膜横隔膜ヘルニア

腹膜心膜横隔膜ヘルニアはは横中隔の未発達を原因とし、横隔膜腹側にて腹腔と心膜腔が連絡することにより、腹腔内臓器の一部が心膜嚢内に逸脱する先天性疾患と報告されています。犬よりも猫で多く認められ、 多くは無症状です、ヘルニア孔の大きい症例では呼吸器症状や消化器症状などの臨床症状が認められる場合があります。外科的整復後の予後は良好とされておりますが、猫における手術後の死亡率は、3.2~14%と報告されております。


「猫の腹膜心膜横隔膜ヘルニア(その1)」
5才の猫メス、当院の各種にて心膜腹膜横隔膜ヘルニアと診断されました。
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「術前胸部X線」
心陰影の拡大(肝臓と胆嚢が胸腔内に逸脱している)が認められる。
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「術後X線」
心陰影が明確に確認できる。肝臓、胆嚢を正常位置に戻すことができた。胸腔内との連絡性はないので、術後の気胸は認められなかった。

「猫の腹膜心膜横隔膜ヘルニア(その2)」
2才の猫去勢オス、ワクチン接種で来院時の健康診断で肝数値の異常が認められ、精査を行い、心膜腹膜横隔膜ヘルニアと診断されました。
心膜横隔膜ヘルニア術前.png
「術前胸部X線」
肝臓の80%程が心膜内に進入しており、一部心膜との癒着も認められましたが、出血もほとんど認められず、無事手術を終えることができました。

心膜横隔膜ヘルニア術後.png
「術後X線」
3-4日の入院後、経過は良好です。

「猫の腹膜心膜横隔膜ヘルニア(その3)」
スコティッシュホールド7ヶ月齢オス、去勢手術前に偶発的に横隔膜ヘルニアを認めた。腹部超音波検査では肝臓の一部が心膜内に突出していた。月齢と既往歴から先天性と判断された。

「術前X線」

「術後X線」
本症例は一部心膜との癒着があり、技術的には難易度の高い症例でしたが、術後合併症も認められず、経過は良好でした。

「慢性的な下痢を呈していた2歳大型犬の1例」
本症例は間欠的な下痢を主訴に他施設を受診した際に実施した血液検査で肝数値の異常を指摘されました。
処方された薬で対症療法で治療を行っておりましたが、消化器症状が認めれた為、精査を目的として当院を受診しました。

当院受診後の各種検査にて「腹膜心膜横隔膜ヘルニア」と診断されました。
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「術前胸部X線」
胸部X線では腹部の消化管のガスが胸腔内に認められ、横隔膜のラインは一部腹側側で消失しております。
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「術中所見」横隔膜の一部欠損が認められます。
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「術後X線」
術前と比べ心陰影が明瞭に認められるようになりました。
大型犬で成犬での本疾患は比較的珍しと思われます。報告が少ないものですから手術リスクもありましたが幸い経過良好に推移しております。(天寿を全うするまで生存しました)


1)BanzAC,Gottfried SD:Peritoneopericardial diaphragmatic hernia:a retrospective study of 31 cats and eight dogs.
J AmAnimHospAsoc.Nov-Dec;46(6):398(2010)
2)ReimerSB,KylesAE,FilipowiczDE,GregoryCR:Long-term outcome of cats treated conservatively or surgicaly for peritoneopericardial diaphragmatic hernia:6cases(1987-202).JAmVetMedAsoc.Mar1;24(5):728- 732(204)

2022/05/20