蛋白漏出性腸症
その名の通りに体内のタンパク質が腸管から失われてしまう病気の総称です。
通常下痢や軟便などの臨床症状を示しますが、良便の場合にも腹部の膨満を主訴に来院して診断される症例もあります。
その中には腸リンパ管拡張症、重度炎症性腸疾患、消化器型リンパ腫が含まれます。
蛋白漏出性腸症では体内で重要なアルブミン以外にも様々な蛋白が失われるために、血栓ができやすい状態になったり、腹水や胸水の貯留により、体調不良の原因となります。
血栓症が続発する症例が多いため、低アルブミンの治療と同時に血栓症の治療も並行する必要があります。
【リンパ管拡張症】
リンパ管とは腸で脂肪やアミノ酸といった栄養素が運ばれるための通路です。
ここが開いてしまうことで腸の中に(便の中に)アルブミンを含む様々なタンパク質が失われます。
リンパ管拡張症では原因疾患の治療と共に低脂肪食の給餌が推奨されています。
拡張したリンパ管から腸の細胞の周りに脂肪が漏れ出てしまうと炎症が発生し病態をより悪化させるためです。
【炎症性腸疾患( IBD)】
様々な原因により慢性的に腸が強い炎症を起こしているような病態です。
食物アレルギーや免疫の病気や特定の抗生剤が有効な下痢などが含まれます。
これらの原因疾患の治療がそのまま蛋白漏出性腸症の治療につながります。
【消化器型リンパ腫】
血液中のリンパ球という細胞が腸管で異常に増殖した腫瘍です。
この腫瘍はIBDに続発して診断される場合も多く、(IBDの症例の一部にリンパ腫が潜在的に潜んでいたものかもしれません)確定診断が難しいタイプもあり、臨床経過により診断と治療が困難な症例もそんざいします。
診断結果により抗癌剤や外科治療が必要な場合もあります。
2017/12/26