ふく動物病院

診療科目

犬の膝蓋骨内方脱臼(Medial patellar luxation)

膝蓋骨内方脱臼(MPL:Medial patellar luxation)は犬の整形学的問題として広く認識されてきました。多くの報告で病因や臨床兆候、手術方法、その長期的、短期的な治療結果が議論されてきました。一般的に推奨されている手術方法は軟部組織再建と大腿骨滑車溝の形成と脛骨粗面の転移術が挙げられます。患肢の角度強制が必要な場合は最も重篤と考えられます。
膝蓋骨脱臼のグレード(進行度)は一般に4段階で表記されます。
Gradeはわかりやすく分類するとGrade1-2は習慣性脱臼(触診時には膝蓋骨が正常の位置にある状態)
「よく脱臼するが、ニュートラル(平常時には)では脱臼していない」ものがGrade1-2になります。
パテラグレード.png

Grade3-4に関しては「ニュートラル(平常時には)で外れている状態を指します。

patella ope before02.jpg
「膝蓋骨内方脱臼X線画像」

膝蓋骨内包脱臼の外科治療は現在、複数の手術手技を組み合わせて治療されています。また「どの症例にどの手術手技を組み合わせて治療するのか?」は未だ議論があり、一定の「コンセンサス(共通認識)」は得られているものの、細かい術式などは、疾患の重症度(グレード)や経験によるものが多い現状です。
現在の治療の主流は
①大腿骨滑車溝の形成術(ブロック法orウエッジ法)
②脛骨粗面の転移術
③内側の軟部組織のリリース
④関節胞の縫縮
が挙げられ、術前、術中所見により施術されます。

滑車形成術.JPG
通常「大腿骨滑車溝の形成術」はまず第一選択としてほとんどの症例に施術されます。

症例①  2歳チワワ 膝蓋骨内方脱臼G2-3
整復後X線写真
(滑車溝形成術・脛骨粗面転移・関節胞縫縮・軟部組織リリース)
国立市膝蓋骨脱臼.png

症例② 12歳6ヶ月チワワ 膝蓋骨内方脱臼G4
整復後X線写真
(滑車溝形成術・脛骨粗面転移・関節胞縫縮・内側軟部組織リリース) 
パテラG4.jpg

症例③
7歳4ヶ月トイプードル 膝蓋骨内方脱臼G3
整復後X線写真
(滑車溝形成術・脛骨粗面転移・関節胞縫縮・内側軟部組織リリース) 
チョコ001.jpg

症例④ 1歳6ヶ月ポメラニアン 膝蓋骨内方脱臼G3
整復後X線写真
(滑車溝形成術・脛骨粗面転移・内側軟部組織リリース)
パテラHP2.jpgパテラHP用.jpg

開業以来、膝蓋骨脱臼の症例を多く手術させていただきました。
大学病院整形外科でも多くの膝蓋骨脱臼の症例を経験させていただきました。
近年では前十字靭帯断裂に対する矯正骨切術(TPLO)も多く経験させていただき、膝関節に対する理解が深まったと感じております。今後も安定した医療を提供できるように精進してまいります。

適切な治療が行われない場合の合併症としては
骨関節炎(Osteoarthritis)の進行や前十字靭帯断裂(Cranial cruciate disease)半月板の損傷などが考えられます。
references
Surgical treatment of medial patellar luxation without femoral trochlear groove deepning procedures in dogs:91 cases(1998-2009) william R javma vol238,no.9,may 1, 2001
更新2020/9/01