ふく動物病院

診療科目

フェレットの消化器疾患

フェレットでは治療に反応しにくい下痢が多く経験されます。しかしながら、それらの中には基本的な飼育スタイルの間違いから起こっている事例が多く見られます。
フェレットは1日9~10回の食事回数が好ましく、動物性タンパク質含有量の高い食餌が必要です。繊維や植物性タンパク質を多く与えると腸内細菌バランスを乱し消化不良を誘発します。果物を好む個体が多いのですが、繊維が多く消化器疾患の原因となることが多く推奨されません。
治療においては代謝が早く病気の進行も早いため支持療法が重要です。食べなくなれば強制給餌が必要となることが少なくありません。
食物の腸管内の通過時間が短いため、経口薬による治療は効果が低く、注射による治療が必要になる症例を多く経験します。

●嘔吐

嘔吐の発生率は比較的低く、異物摂取後の腸閉塞、巨大食道症、重度胃炎・胃潰瘍などが経験されます。
吐く代わりに、よだれ、前肢で口元をひっかく、舌なめずり、顎をする、後ずさり、眼を細めるなどのサインを示す個体が多く認められます。

●炎症性腸疾患(IBD)

自己の免疫異常と食物アレルギーの関与する病気です。
治療にはステロイドや免疫抑制剤が必要になり、無治療の場合リンパ腫という腫瘍病変に移行することがある為注意が必要です。診断は治療に対する反応で仮診断することが多いです。

●緑色下痢

食物の腸管内の通過時間が短いと便内色素を緑から褐色の変換する過程が終了する前に排出され、緑色下痢が認められます。この症状は様々な病気において発生し、個別の診断治療が重要と考えております。

●アリューシャン病

予防法、治療法のない病気です。発症すると慢性経過をたどり衰弱死します。その過程で慢性下痢が認められる事が多いです。
パルボウイルス感染症による免疫複合体関連性疾患です。

●消化管腫瘍

多くは腹腔内リンパ節や肝臓でのリンパ腫です。
胃や腸の腺癌も経験されます。
浸潤性の腫瘍は腸管の閉塞を起こし、外科摘出適応となります。
リンパ腫は抗がん剤に反応の認められる症例が多く、抗がん剤による治療を行います。

難治性下痢に対するアプローチは容易ではなく、診断がつかない場合は最終的な確定診断として試験的開腹が必要になる症例も少なくありません。治療期間も長期に及ぶ症例が多いです。

副院長 清田大介