TPLO(Tibial Plateau Leveling Osteotomy)
TPLOの手術目的の一つにTPAの矯正(5度程度にすること)が挙げられます。
本画像上では青線を赤線の角度に矯正すると膝くずれがなくなります。
TPLOをどう説明するか?
症例①TPLOを実施したラブラドールレトリバー
(TPLO施術後X線写真:SYNTHES社製3.5mm TPLOプレート)
人の前十字靱帯断裂の原因はほとんどが外傷性(スポーツや怪我)によるものとされておりますが、犬の前十字靱帯断裂の原因は変性(いわゆる老化現象)によるものが多く、犬の場合には、早ければ6歳齢の症例から、中高齢(10歳前後)に多く認められる疾患です。
「治療について」(TPLO vs 関節外制動術)
前十字靭帯の断裂に対する手術術式は数多く報告されております。
関節外制動術(ラテラルスーチャー法)が日本国内では一般的に行なわれておりますが、関節外制動術では膝関節の安定性を得るために非吸収性の糸を用いて行なわれる為、糸の「断裂」や「ゆるみ」により臨床症状が再び認められる症例が存在します。
Gordan-Evancsの報告(2013年JAVMA)によると
TPLO vs 関節外制動術の1年後比較ではTPLO群の方が著しくよくなっている(significantly better)と報告しており飼い主さんの満足度も高かった(93%満足)と報告しております。
近年では日本国内でも前十字靭帯の断裂に対して、脛骨水平部骨切り術(TPLO)が広く用いられております。TPLOと呼ばれる術式は1993年にSlocum により考案され、以後米国を中心として20年以上の歴史があります。
症例②TPLOを実施したポメラニアン
(TPLO施術後X線写真:SYNTHES社製TPLOプレート2.0mm)
症例③TPLOを実施したペキニーズ
(TPLO施術後X線写真:SYNTHES社製TPLOプレート2.0mm)
「TPLOの利点」
1.早い回復期間
2.比較的体重の重い症例に対しても治療効果が得られる
3.靱帯の代わりとなる糸を用いていないため、糸の断裂による再発や、再手術のリスクが少ない。
小型犬のTPLO術前・術後歩様比較
症例④TPLOを実施したトイプードル
後肢の跛行を主訴に当院を受診しました。
<整形外科検査(触診)>
脛骨圧迫試験(陽性)
drawer sign(陽性)
(TPLO施術後X線写真:SYNTHES社製TPLOプレート2.7mm使用)
※膝蓋骨脱臼と前十字靱帯断裂が併発する症例も多く認められます。膝蓋骨脱臼診断時には必ず前十字靱帯の評価を行うべきであり、Drawer Sighn 脛骨圧迫試験
膝蓋骨脱臼の診断時点でTPLOを含めた治療法の選択が必要と我々は考えております。
1.Slocum B, Slocum TD. Tibial plateau levelling osteotomy for repair of cranial cruciate ligament rupture in the canine. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice 1993; 23: 777–795.2.
2.Complications of tibial plateau levelling osteotomy in dogs
M. S. Bergh1; B. Peirone2
iIowa State University College of Veterinary Medicine, Ames, Iowa, USA; 2School of Veterinary Medicine, University of Turin, Turin, Italy
2025/02/01